シャワーを浴びようとそっと部屋を出ると、朝からリビングでイチャつく仲睦まじい夫婦の姿が見える。

うちの両親はホントに仲が良い。世間では熟年離婚だのどうだの話題になっていたりもするけれど、うちに限ってそんなことはまず無いだろう。

「ねぇ、メーシー」
「どうしたの?」
「晴がマナとレイの仲を疑ってるわ」
「は?相変わらず変な趣味だね、王子は」
「アタシも思ってるのよ。あの二人、ちょっとおかしいんじゃない?」

相変わらずストレートに物を言う母親だ。おかげで、声を掛けるタイミングをすっかり失ってしまった。

物音を立てないようにそっと移動し、階段の最上階に座り込んで息を殺す。

「兄妹ってあんなものなの?」
「さぁね。俺にはいないからわかんないよ」
「アタシにだっていないわ」
「だったら俺達にはわかんないだろ?」
「そうだけど…でも、ちょっと異常よ?あれは。まるで恋人同士じゃない」
「そんな風に思うからだよ」
「そうかしら…」

不満げに唇を尖らせる母と、既に俺の存在に気付いている父。それでも気付いていないフリをして話を続けるのだから、我が親ながら嫌な奴だ。

「マナはレイをどうこうしようだなんて思っちゃいないさ。王子じゃあるまいし」
「What's!?晴がレイに何かしようと思ってるわけ!?」
「物の喩えだよ。でも…あり得ない話じゃないかも。レイはマリーに瓜二つだからね」
「怖いこと言わないで!そんなことしたら引っ叩くだけじゃ済まさないから!」

よくそんな恐ろしいことをサラッと口に出来るものだ。いくらロリコンだとは言え、自分の友人だろうに。

「ふふっ。心配しなくても大丈夫だよ。レイはマナが大好きだからね」
「ほらっ!やっぱりメーシーだってそう思ってるんじゃない!」
「けど、マナにその気はないよ。ね?マナ」

慌てて見上げた母が、最上階に腰掛ける俺を漸く見つけた。