「夜は少し涼しいですね」
「まぁ…そうかもな」

温暖化だか何だか知らないけれど、昼間は暑くて出かける気も失せる。昼間少し出かけていただけに、まだ体にダルさが残っていた。

「公園寄ってく?」
「そうですね」

我が家の近くには、ちょっとした森林公園がある。昼間はあまり来ることが無いのだけれど、こうしてコンビニの帰りに寄ることはたまにあった。

シンと静まり返る公園に、色は無い。ここはあの色、あそこはあの色と、勝手に色付けし、無言の息苦しさを何とか逃す。セナには紅。そう思い、ふと出会った日のことを思い出す。

「お前さ、ちょっと変わったよな」
「そうですか?」
「んー…正しく言えば、俺の中でのお前のイメージが変わった、かな」

どうやら俺がまだ日本に居た頃はよく一緒に居たらしい俺達が再会したのが、七月の初め。それから約二か月になる。

白いスカートの裾をふわりと揺らせていたセナは、いかにも「何も知りません」と言うような少女で。まさに白。そんなイメージだった。

「残念ですか?イメージと違って」
「別に…そんなことはねーけど」

共に過ごす時間が増えるにつれ、徐々に俺の中でセナのイメージが変わった。今色で表すならば、やはり紅だ。深く、溶け込むような…かと言って、決して消えはしない色。

「俺は今のお前の方が好き…かな」
「マリちゃんが言ってました。マナは年上の女の人が好きなんだって」
「ん?まぁ…そうかもな」

面倒くさいのはゴメンだ。だから、慣れた風な女としか付き合ってこなかった。そうなると必然的に年上が多くなってしまい、気付けば元カノの九割は年上になっていた。


「だから…セナのことは好きじゃないんですか?セナがレイちゃんと同じ年だから」