「ああ、何だったかな。あの何とかいう小倅、やはり廓者に攫われておったぞ」
ようやく思い出したように、牙呪丸が言う。
絞った布で牙呪丸の袖を拭っていた小菊の動きが止まった。
「何だってぇ? 生きてるんだろうね?」
「さぁのぅ。我ならとっとと殺してしまうが」
どこかのんびりと言う牙呪丸に、狐姫がずいっと膝を進めた。
「生き死にも確かめてないのかい? とりあえず、どこに連れて行かれたのかぐらい、調べるのが普通だろ?」
「我が頼まれたのは、小僧の生き死にではない」
「だったら! どこに連れて行かれたんだよ?」
苛々と進めた膝を叩きながら言う狐姫に、牙呪丸は少し首を傾げた。
呶々女に関すること以外では、どんなことでも表情は変わらない。
「・・・・・・そういえば、それを聞く前に、着物の汚れに気づいてしまった」
相変わらずの無表情で、牙呪丸が呟く。
その瞬間、狐姫のこめかみが、ひく、と引き攣ったのを、小菊は確かに見た。
だが何となく、凍り付いた空気に気づかないふりをしつつ、小菊は俯いて、一心に牙呪丸の袖を拭い続けた。
ようやく思い出したように、牙呪丸が言う。
絞った布で牙呪丸の袖を拭っていた小菊の動きが止まった。
「何だってぇ? 生きてるんだろうね?」
「さぁのぅ。我ならとっとと殺してしまうが」
どこかのんびりと言う牙呪丸に、狐姫がずいっと膝を進めた。
「生き死にも確かめてないのかい? とりあえず、どこに連れて行かれたのかぐらい、調べるのが普通だろ?」
「我が頼まれたのは、小僧の生き死にではない」
「だったら! どこに連れて行かれたんだよ?」
苛々と進めた膝を叩きながら言う狐姫に、牙呪丸は少し首を傾げた。
呶々女に関すること以外では、どんなことでも表情は変わらない。
「・・・・・・そういえば、それを聞く前に、着物の汚れに気づいてしまった」
相変わらずの無表情で、牙呪丸が呟く。
その瞬間、狐姫のこめかみが、ひく、と引き攣ったのを、小菊は確かに見た。
だが何となく、凍り付いた空気に気づかないふりをしつつ、小菊は俯いて、一心に牙呪丸の袖を拭い続けた。


