始末屋 妖幻堂

「何じゃ、いきなり物騒な。我に刃物を向けるなぞ、愚の骨頂じゃぞ」

 足元に倒れた亡八に、冷たい視線を落とすと、牙呪丸は顔を上げた。

「我とて、好きで小太のことを探っておるわけではない。頼まれた故、仕方なく、じゃ」

「お、お前、何者だっ! 頼まれたって誰に。小僧のことを覚えてるってことは、あの店のモンじゃねぇな?」

 牙呪丸を取り囲んでいる仲間も、それぞれ得物を手にして構える。
 その得物たるや、到底素人とは思えない、寸鉄や猫手といった代物だ。

「ほぅ? そういえば旦那が、そんなことを言っていたらしい。人間風情が、なかなか小賢しい真似をしおるではないか」

 どうやら千之助の見立て通り、八百屋の者は小太を忘れる術をかけられているらしい。

「妙な術師まで、伯狸楼とかいうところにはおるのか? そのようなところに呶々女を送り込んで、旦那も何と不用意な・・・・・・」

 ふ、とため息をつく牙呪丸に、空気を乱されていた破落戸どもが動き出した。
 少し輪を縮め、じりじりと間合いを計る。

「ったく、妙な野郎だぜ。けどま、確かに見てくれは良いな。できれば生かして連れ帰りたいところだが」

「おうさ。予定してた余興も、小菊の奴が逃げ出したせいでお釈迦になりそうだ。でもこいつを使えば、また面白い余興ができそうだな」