始末屋 妖幻堂

 八百屋を後にした牙呪丸は、瓜を手に、市を抜けた。
 川沿いに歩き、橋の手前で立ち止まる。

 この辺りは、町中のわりには人が少ない。
 牙呪丸は手の中の瓜に、視線を落とした。

 そのまま少し考えていると、思った通り、背後に妙な気配がする。
 牙呪丸は、ついと道を離れ、土手を降りていった。

「さて。先はお主もあの店の者を知っておると言うたな」

 言いながら、ゆっくりと振り向く。
 そこには先程の亡八。

 こういう荒くれ仕事には慣れているのだろう。
 だがその自分の尾行をあっさりと見破り、かつ尾行に気づいた上で、わざと人気のない場所へと移動した牙呪丸の行動に、驚いた顔をしている。

「なっ・・・・・・。お前、何モンだっ!」

 噛み付く勢いで叫ぶ。
 牙呪丸はそんな亡八に、正面から向き直った。

「我のことなど、どうでも良い。我も、お主のことなど興味はない。聞きたいのは、小太とかいう小倅のことよ」

 勢い込む亡八とは対照的に、牙呪丸は淡々と言った。