始末屋 妖幻堂

「おっ女将に用事なのかい? もも、もしかして女将さんの知り合いっ?」

 どぎまぎと言葉を紡ぐ娘に、牙呪丸は軽く首を振った。

「いや。お主が店のものを良く知っているから」

「ええっと、そ、そうかな。あたし、結構長いからさっ。小さいときからずっと店を手伝ってるから、自然と覚えたんだよね」

 褒めたと取れなくもない牙呪丸の言葉に、娘は余計舞い上がる。
 牙呪丸のほうは、娘の言葉にやっと再び反応した。

「ほぅ? 長いと言うなら、店の者にも詳しかろうな。聞きたいことがあるのだが」

「何? 何でも聞いて。今この店を手伝ってる中じゃ、古株なほうだから、結構何でも知ってるよ」

 話が弾んだことに、嬉々として娘が食い付く。

「小太という者のことなのだが」

 辺りを憚ることもなく、牙呪丸はずばりと口にした。
 元々人でない牙呪丸は、当然ながらそういった心配りなどない。
 亡八が張っているかもしれないから声を潜めるとか、遠回しに事を進めるなどという頭はないのだ。

「えっ・・・・・・と、小太?」

 娘が、きょとんとする。
 いきなり店の小者の名前を出されて、単に頭がついていかないだけなのか、はたまた千之助の言うように、術で忘れているのか。