始末屋 妖幻堂

「ほぅ? そんなに甘いのか」

「もも、もちろんっ! う、うちで扱ってる商品に、外れはないんだよ! ほら、その大根やこっちの干物だって、新鮮そのものなんだ。市は広いけど、これほどいろいろ扱ってるのは、うちぐらいなもんなんだよっ」

「量があっても、甘味がないなら用はないが」

 娘の熱い語りは、さらっと無視し、牙呪丸は一歩、彼女に近づいた。

「お主は、この店の女将か?」

 見た目超絶美男子の牙呪丸に近づかれ、娘は問いの不自然さには気がいかず、ただ目を見開いて、ふるふると首を振った。

「違うよぅ。あああああたしはただの、女中だよ」

 はっきり言うと、普通は聞くまでもない事柄である。
 娘はどう見ても十代。
 このような大店の女将なわけはないのだ。

 だが人でない牙呪丸にとっては、人の見てくれなど、誰も彼も一緒と言っても過言でない。
 大小ぐらいしか、見てないかもしれないのだ。