「そうだろうと思って、恥を忍んであたしから会いに来たのさぁ。ああ千さん」

 うっとりと、千之助の胸に寄り添ってくる。

---やれやれ。こんなところ狐姫が見たら、俺っちの命が危ねぇぜ---

 狐姫にとっては、呶々女などの千之助のお仲間以外の女子から、彼が『千さん』と呼ばれること自体が気に入らないのだ。
 お得意様は仕方ないので特に気にしないが、昨日今日会ったばかりの鄙女など、狐姫の耳に入ったらどうなることやら。

 そんなことを考えているうちに、冴は自ら帯を解く。
 ぱっと浴衣を脱ぎ捨てると、千之助にしなだれかかった。

 千之助は、思わず顔を背けて笑いを噛み殺した。
 あまりに豪快な脱ぎっぷりに、情欲など、全くそそられない。

 冴は顔を背けている千之助に、何を勘違いしたのか、優しく言った。

「そんな我慢しなくっても良いんだよ。ほら、遠慮しないで・・・・・・」

 興奮にぎらつく瞳で、冴は千之助の帯に手をかけた。
 とりあえず、好きにさせてやろう、と、千之助はそのまま大人しく、冴にされるがままになる。

「ふふ・・・・・・」

 冴は嬉しそうに、千之助の浴衣を開き、胸をまさぐる。

 しばらく冴に、したいようにさせた後、千之助はおもむろに、冴を押し倒した。
 それなりに、冴を楽しませる。

 散々焦らせつつ、千之助は密かに指を擦り合わせた。
 合わせた指から、細い煙が上がる。
 同時に香の香りが漂い、冴は恍惚の表情のまま、眠りに落ちていった。