始末屋 妖幻堂

 雲を割って突き進んでいた龍は、一刻ほどで高度を下げる。
 眼下には、小さな山間の村が、こじんまりと見えた。

「あそこが尾鳴村か。ふ~む、小さいが、そう貧しい村でもなさそうだな」

 呟き、千之助は雨具の蓑を被る。

「龍は移動にゃ便利だが、雨を降らすのが難点だなぁ。蓑は必須さね・・・・・・」

 そのとき、不意に突風が吹いた。
 龍から両手を離していた千之助は、大きく体勢を崩す。

「うわっち」

 一気に龍の尻尾まで吹き飛ばされ、片手で尻尾の先に掴まったものの、雨で濡れた蛇体は滑りやすい。
 しばらく耐えていたが、とうとうつるりと手が滑ってしまった。

「ちっ」

 舌打ちしつつ、指を続けざまに二回鳴らす。
 あっという間に大きな龍が掻き消え、元の竹のおもちゃが落ちてくる。

 そのまま、千之助は村外れの湖に突っ込んでいった。