その頃千之助は、京の外れの竹藪の中で何かを作っていた。

「・・・・・・っと、こんなもんかな」

 細い竹を短くいくつかに切り、糸で繋いだおもちゃだ。
 一番先には口もあり、目も切り込んで作ってある。

 振ると、かちゃかちゃと音は鳴るものの、本物の蛇のようにくねくねと動く。

「さて。ちんたら信州まで歩ってるわけにゃいかねぇんでな」

 ぽい、と竹の蛇を宙に放り出すと同時に、ぱちんと指を鳴らす。
 地に落ちる前に、竹の蛇はみるみる大きな龍になった。

「ほい。信州の尾鳴村辺りまで飛んどくれ」

 千之助がひょいと背に飛び乗ると、龍はぐんと高度を上げる。
 たちまち千之助の姿は、龍と共に、空の彼方に消え去った。