「軽口叩いてないで、ほら、さっさとしないと、香が切れるよ」
「おっと」
千之助も、慌てて小菊に向き直る。
催眠状態を作り出すこの香は、あまり一度に沢山は使えない。
「そうさなぁ。じゃ、そうそう、佐吉って野郎と、逢い引きの約束をしてたんだろう? 駆け落ちでもする予定だったのかい?」
「・・・・・・佐吉さんは、あたしと一緒になりたいって言ってくれて。特にはっきり駆け落ちしようって言われたわけじゃないけど・・・・・・そうなっても良いとは」
「そういうことじゃねぇんだよなぁ~」
興味なさげに千之助が言う。
だが小菊は、己の気持ちをぶつぶつ呟き続ける。
催眠状態は、こういうとき厄介だ。
心の奥底を覗けば覗くほど、感情的になって問答にならない。
「佐吉さんは、ちょっと怪しい奴らと付き合いもあったけど、人は良くて。弁が立つから他の娘にも人気があるようなお人で。佐吉さんがあたしを選んでくれたときは、ほんとに嬉しかった」
「弁が立って娘に人気たぁ、旦さんのことじゃないかえ」
興味を失い、適当に聞き流していた千之助に、狐姫がぷぷぷ、と笑いを浮かべる。
「おっと」
千之助も、慌てて小菊に向き直る。
催眠状態を作り出すこの香は、あまり一度に沢山は使えない。
「そうさなぁ。じゃ、そうそう、佐吉って野郎と、逢い引きの約束をしてたんだろう? 駆け落ちでもする予定だったのかい?」
「・・・・・・佐吉さんは、あたしと一緒になりたいって言ってくれて。特にはっきり駆け落ちしようって言われたわけじゃないけど・・・・・・そうなっても良いとは」
「そういうことじゃねぇんだよなぁ~」
興味なさげに千之助が言う。
だが小菊は、己の気持ちをぶつぶつ呟き続ける。
催眠状態は、こういうとき厄介だ。
心の奥底を覗けば覗くほど、感情的になって問答にならない。
「佐吉さんは、ちょっと怪しい奴らと付き合いもあったけど、人は良くて。弁が立つから他の娘にも人気があるようなお人で。佐吉さんがあたしを選んでくれたときは、ほんとに嬉しかった」
「弁が立って娘に人気たぁ、旦さんのことじゃないかえ」
興味を失い、適当に聞き流していた千之助に、狐姫がぷぷぷ、と笑いを浮かべる。


