始末屋 妖幻堂

 狐姫はその名の通り、狐だという。
 とらは張り子人形だとして、杉成も人形だとか言っていた。

 では。

 小菊は前に座る千之助を見る。
 彼は、何者なのか。

 小菊の知る限り、この中では一番ヒトらしい。
 ご飯も普通に食べるし、普通に仕事に行く。

「どうしたぃ?」

 ふと気づけば、千之助が見つめている。
 うっすら笑みを浮かべたその顔は、人形のようといえば、そう見えなくもない。

 ぞく、と寒気を感じ、小菊は慌てて目を伏せた。

「い、いえ・・・・・・」

 千之助が怖いわけではないのだ。
 千之助だけではない。
 ここが本当の化け物小屋だとしても、恐怖は感じない。
 それもまた不思議なのだが。

「・・・・・・ふ~む、何々?」

 特に突っ込むこともせず、千之助は、とらの首に括り付けられていた組紐を解く。
 そこに、小さな紙切れが挟み込まれてある。

「相変わらず、呶々女の字は読みにくい。・・・・・・う~ん、何々? 遣り手の名は『おさん』。はぁん、そういうことかい」

 早くも合点がいったように、千之助は顎を撫でる。