始末屋 妖幻堂

「まぁったくお前らは。聞いてるこっちが痒くなるぜ。ま、とにかく、意外にも佐吉の野郎は、結構な金を支払ってくれたってこった」

「そうなんかい?」

「ああ。仲介料だけじゃなく、自らも働いて、貯めてたらしい。顔を活かして、上級の女中に渡りをつければ、結構な大店や、でかい旅籠で雇ってもらえる。女将に気に入られれば、給金だって、それなりにもらえるだろ」

 実際佐吉は、普通の町人が普通に働くよりも、相当多い金を貯め込んでいた。
 そしてそこから、半分を千之助に渡そうとした。

 が、千之助はそこから必要分だけを受け取り、あとは押し返した。
 それでも千之助の手に入ったのは、町人が一月余裕で暮らせるほどの金だ。

「あいつが村に帰ったのぁ、結構金が貯まったから、親と兄貴を呼び寄せようと思ったからだそうだ。佐吉が村に帰ったら、いつか例のヤクザ者に嗅ぎつかれるかもしれねぇから、都じゃなくても、どっかで家族で暮らそうと相談しに行ったんだと。まぁ、そうすんなり話が運ぶはずもなく、親父には散々怒られるわ、兄貴は何かえらい病だわで長引いてるうちに、ヤクザ者に踏み込まれたんだな。佐吉が外に逃げたのぁ、てっきり奴らは自分を追ってくると思ったからだ。病で動けねぇ兄貴に手出されちゃ敵わねぇからな。親父も歳だし。ところが奴らは、佐吉を追う前に、家族を手にかけちまったってこった」

「・・・・・・考えは浅はかだけど、ちょっと・・・・・・可哀相な奴だね」

 散々佐吉を敵視していた呶々女にしては珍しく、ちょっとしんみりと言う。
 千之助は、懐から小さな包みを取り出した。

「ほれ。これは、お前さんの取り分だ」