千之助は、ちらりと狐姫を見た。
「おい狐姫。いくら俺っちでも、あんまりあからさまだと嫉妬すんぜ」
「あん旦さん。怒らないでおくれよぅ。わざとしてるわけじゃないんだよぅ」
困ったように言いながらも、狐姫は嬉しそうに千之助にしなだれかかる。
そして、素直にこそこそと佐吉の目から逃れるように、千之助の背後に回った。
心なしか、佐吉もほっとしたようだ。
「で、金は祠に預けたって? ん? 小菊を見つけるきっかけになった祠?」
「ああ。花街の端っこのさ、小さいけど、結構立派な祠だよ。何となく、あそこなら大丈夫だって思ってよ。どっちにしろ、清のための金だからな」
「ふむ、九郎助稲荷の祠か。うん、ま、お前さんのねぐらに置いておくよりは、よっぽど安心だろうな」
「明日、取ってくるよ。ついでにお礼参りもしねぇと」
な、と佐吉は、傍らの小菊に言い、小菊も微笑んで頷く。
二人の間の暖かい空気に、千之助は眼を細め、煙管を咥えて奥を顎で示した。
「だったら折良く、清水の油揚げがある。あれを少し持っていきな」
お前にゃまた買ってきてやるからな、と背後の狐姫に言い、狐姫も先のことで機嫌が良かったので、快く承知する。
そして佐吉と小菊は、予定通り次の日に九郎助稲荷に詣で、金を持ってきたということだ。
「おい狐姫。いくら俺っちでも、あんまりあからさまだと嫉妬すんぜ」
「あん旦さん。怒らないでおくれよぅ。わざとしてるわけじゃないんだよぅ」
困ったように言いながらも、狐姫は嬉しそうに千之助にしなだれかかる。
そして、素直にこそこそと佐吉の目から逃れるように、千之助の背後に回った。
心なしか、佐吉もほっとしたようだ。
「で、金は祠に預けたって? ん? 小菊を見つけるきっかけになった祠?」
「ああ。花街の端っこのさ、小さいけど、結構立派な祠だよ。何となく、あそこなら大丈夫だって思ってよ。どっちにしろ、清のための金だからな」
「ふむ、九郎助稲荷の祠か。うん、ま、お前さんのねぐらに置いておくよりは、よっぽど安心だろうな」
「明日、取ってくるよ。ついでにお礼参りもしねぇと」
な、と佐吉は、傍らの小菊に言い、小菊も微笑んで頷く。
二人の間の暖かい空気に、千之助は眼を細め、煙管を咥えて奥を顎で示した。
「だったら折良く、清水の油揚げがある。あれを少し持っていきな」
お前にゃまた買ってきてやるからな、と背後の狐姫に言い、狐姫も先のことで機嫌が良かったので、快く承知する。
そして佐吉と小菊は、予定通り次の日に九郎助稲荷に詣で、金を持ってきたということだ。


