始末屋 妖幻堂

「・・・・・・ほんとに、あいつらはもう、いねぇのか?」

 このまま都近くに留まっていいものか、まだ決断しかねているようだ。
 小菊のためにも、伯狸楼からは遠く離れたい。
 始末した、と言われても、小菊も佐吉も、その現場をさっぱり見ていないのだ。

「二人とも、廓ぶっ壊したときは意識がなかったからなぁ。あそこから逃げてきた裏の遊女らがここにいたときも、まだ目覚めてなかったし」

 ぽりぽりと頭を掻く千之助に、小菊が少し身を乗り出した。

「え、裏の、桃香姐さんとかのことですか? ここにいらしたんですか?」

 千之助は、ちょっと首を傾げた。
 興味のない女子の名前など、いちいち憶えていない。
 ただかしましい女子が五人、わらわらといた、という程度だ。

「そんな名前の奴もいたかなぁ。とにかく裏見世の遊女らが五人、ここでしばらく暮らしてたのさ。ま、ほんの短期間だがね。皆、軽い火傷で、動けないほどの奴はいなかったし」

 そういや一人、結構重傷な奴がいたなぁ、でもあいつぁ元々怪我してたんだったな、と思い返す。
 あれだけ彼のことを想った桔梗のことも、薄情にも大して憶えていない千之助なのだった。

「じゃ、ほんとに皆、自由になったんですか。伯狸楼は・・・・・・なくなったんですね」

 裏の遊女が自由になったということ自体が、すなわち伯狸楼の崩壊を意味する。
裏見世で、もっていたような廓だ。