始末屋 妖幻堂

「ふ。小太に払えて、お前さんにゃ払えねぇモンもあるのさ。ただの金なら、そらお前さんのほうが、払いやすかろ」

 そう言いながらも、千之助は少し疑わしそうに佐吉を眺めた。

「お前、ほんとにそんな金、あんのかよ」

「・・・・・・威張るほどは、確かにねぇがな。これでも清に惚れてからは、真面目にこつこつ貯めてたんだ。まぁ・・・・・・村の奴らを、あいつらに売った金だって言われりゃ、それまでだが」

「ああ、仲介料かい」

 こくんと、佐吉が頷く。

「結構な額で請け負ってくれてたから、ちょっと不安だったんだ。・・・・・・やっぱり、少しでも怪しいと思ったところは、やめておいたほうが良かったな」

「そうだな。口止め料も入ってたんだろうな。まぁ、確たる証拠もないし、お前さんを甘く見てたってのも幸いしたお陰で、用済みになった途端、殺されるようなことにはならんかったわけだが」

 そう言って、千之助は小菊を見た。

「危険を冒しても、小菊を逃がしておいて良かったな」

「へ?」

「お前が小菊の行方を知ってると思ったから、あいつらはお前を殺すのを躊躇ったんだぜ。そういう重要な鍵でも握ってなきゃ、人を出すのを渋るようになったお前さんなんざ、あいつらにとっては価値はない。変に疑いを持たれたまま野放しにするのも好ましくないし、だったらとっとと殺してしまおうと思うだろ。ま、お前さんは、あんまり町に通じてないっぽいし、放っておいてもいいかな、ぐらいには思ってたろうが。いつかは殺されたかもしれん。小菊を逃がしたことで、お前は早々に殺されるのを免れたってこった」