「そうでもねぇよ? 人の人生なんか、どうなるかわからねぇ。俺っちだって、完全な未来が見えるわけじゃねぇしな」

 ま、可能性はかなり少ないだろうがな、と、やはりきついことを言い、千之助は小太を引き起こした。
 小太は頭を振って、千之助の横に座った。

「金は佐吉から頂こうかい。とりあえずは、ほれ、折角清水まで来たんだ。今は楽しもうぜ」

 団子の串を突きつけると、小太は、ぱくりと食い付く。

「美味い。呶々女姐さんの菓子も美味いけど、たまにはこういう茶屋で食うのも良いね」

 もしゃもしゃと団子を食いながら、にぱっと笑う。
 ふふ、と笑って、千之助は煙管を吹かせた。

 始末屋の代価は、それなりの金と、依頼人の未来だ。
 未来に起こる事柄の中から、こなした仕事によって未来を頂く。
 千之助が頂いた未来によっては、将来起こるはずだった良いことが起こらなくなることもあり得る。
 始末屋を利用するには、それだけの覚悟がいるのだ。

「お前さんは、まだまだこれから、良いことがいっぱいあらぁな」

 ぽん、と頭を叩く千之助に、小太は少し怪訝な顔をする。
 依頼人は、未来を取られた自覚はない。

「さてと。豆腐屋で極上の油揚げを買って、お前さんの店で干物でも買っていこうかね。今は居候が多いからなぁ」

 千之助の肩で、狐姫が嬉しそうに飛び跳ねる。
 小菊が起きたから、美味い稲荷が食べられる。

 千之助は小太と連れだって、清水を後にした。