「ご免よぅ。でも、おいらで出来ることで返すよ! 金も、出世払いで絶対返すからっ」

 必死で頭を下げる小太に、千之助は、ふ、と笑うと、がしがしと頭を撫でた。

「へ。ま、いいってことよ。元々お前さんに、金なんざ期待してねぇさ」

 ちょっと半泣きになっていた小太は、へ? というように顔を上げた。

「お前にそんな金があるなんて、端から思っちゃいねぇよ。けどなぁ、だからといって、何も貰わねぇで仕事してやるほど、俺はお優しくねぇ。お前からは、別のモン貰うぜ」

「べ、別のモン・・・・・・って?」

 何となく物騒な想像をし、小太は恐る恐る千之助を見上げる。
 そんな小太の額に手を当て、千之助は、にやりと笑った。

「・・・・・・うん。お前さん、良いモン持ってるな。なかなか将来が楽しみな小僧だ」

 ぽかんと、小太は額に当てられている千之助の手を見る。

「・・・・・・ふふ。可哀相だが、小菊との未来を貰おうかい」

 千之助が呟いた瞬間、額に当てられている手の平が、かっと熱くなった。
 小太が衝撃で尻餅をつく。

『何だ、旦さん。えらく甘いね。そんなもん、端からないじゃないか』

 肩の上の狐姫が、笑いながらきついことを言う。
 小太には聞こえないのが幸いだ。