始末屋 妖幻堂

「・・・・・・で、お前さんは、その情報を持って、小菊を逃がす手立てを考えたわけか」

「ああ。その遊女からの情報と、しばらく廓を張って掴んだ情報で、清は決まった日に八百屋に出向くことがわかった。それでも念入りに廓と八百屋を調べてよ、清に付いてる男が、俺の知ってる野郎じゃないときを狙って、実行に移したのさ」

 とにかく足が付かないようにするには、手がかりは少ないほうが良い。
 逃がす者と逃げる者は、お互い知らぬ者同士の偶然であったと思い込ませれば、佐吉側から足が付くことはない。

 しかし、いくら男が佐吉を知らなくても、ここ何日間かの調査中、佐吉の顔を見たかもしれないし、『佐吉』という名前は知られているかもしれない。
 慎重に慎重を重ね、とりあえずは小菊を逃がす、ということに的を絞ったのだろう。

「よくもまぁ、そこまで念入りに考えたもんだ。・・・・・・お前さんがそこまでするのぁ、てめぇのせいで、小菊が攫われたってぇ責任からか?」

 きゅ、と帯を結び、千之助は佐吉の前に回りながら、静かに言った。
 佐吉は、ちらりと入り口に座る小菊を見る。
 しん、と落ちる沈黙。

「お前さんは、とある遊女から伯狸楼の噂を聞いたって言ったな。だったら小菊が、どういう目に遭ったかってのも、想像付くんじゃねぇか?」

 小菊が必死な目で千之助を見る。
 言われたくはないだろうが、佐吉がどこまで事実を掴んでいるかは、確かめないと小菊の為にもならない。

「・・・・・・多少の想像は付くが。けど、買い物に出てるってことは、下働きだろ? 客は取ってねぇってことかな、と思ってた。何で清ほどの娘を、下働きに落とすのかが不思議だったけど・・・・・・」

 一旦言葉を切り、佐吉は拳を握りしめた。