始末屋 妖幻堂

「けど、その嬉しさも、清がいる廓の噂を聞くたびに薄れていった」

 びく、と小菊の身体が強張る。
 千之助は、布をたらいに放り込んで、佐吉の着物を直してやりながら口を挟んだ。

「そうさな。あすこは京の花街でも、一等酷ぇ廓だ。見てくれは立派だがな、内部は地獄よ」

 しかし、と千之助は首を捻る。

「お前さん、京の花街に詳しいわけでもあるまい。廓の内部事情なんか、よくわかったな」

 同じ花街の見世や、昔ながらの常連であれば、気づく者もあるだろう。
 だが山奥の田舎から出てきたばかりの若造に漏れるほど、甘い管理ではないはずだ。
 そんなことなら、あっという間に奉行所の手が入る。

「それがさ、清の見世を知っても、どうしようもなくて困ってるときに、たまたま祠を見つけたんだ。何かもう、何でも良いから頼りたくなってさ、懐にあった、その日の銭を放り込んで、念じてみたんだ」

 ちょっと照れくさそうに言う佐吉に、千之助の片眉が上がる。

「伯狸楼の内情を教えてくれってか?」

「というか、清を取り返せますように、かな。結構必死で念じてたから気づかなかったんだが、ふと目を開けたら、横に一人の女子が、同じようにお参りしてたんだ。何となくナリから、その辺りの遊女だろうと思ったんだが、そいつが教えてくれた」

「伯狸楼の遊女だったのか?」

 あそこの遊女が、一人でふらふらと出歩くことなどできるだろうか。
 千之助の疑問に、佐吉も首を傾げた。