始末屋 妖幻堂

 だが、伯狸楼で小菊がどんな目に遭ったか、身体の傷を見ても、その気持ちは変わらないだろうか。
 小菊も、それがあるから佐吉との再会を、素直に喜べないのだ。

「お前さん、小菊が攫われたとき、その場にいたのか?」

 まずは小菊の疑惑を晴らしてしまおうと、千之助は佐吉に言った。
 固まっていた佐吉は、ああ、と我に返り、顔を覆って俯いた。

「俺とあいつらが、同時についちまった。あのとき飛び出したら、清まで殺されちまうかもしれねぇ。情けねぇけど、俺一人で、あいつらを相手にはできねぇし。清だけを助けられりゃいいけどな、俺が飛び出したお陰で、清まで殺されちゃ、悔やんでも悔やみきれねぇ」

「なるほど、そうだなぁ。小菊は今までの奴より、まともな状態だったから、奴らは無理矢理連れ去ろうとしたんだろ。そんな状態でとっ捕まえた娘を逃がしちゃ、村で問題になるわな。そう思ったら、小菊の口も封じにかかる、か」

「すぐに後を追ったんだが。奴ら、麓に降りるなり、馬使いやがった」

 それで見失ったのだろう。

「信州からこの京まで、確かに普通のヒトにゃ、かなりの距離だ。お荷物抱えてるんだし、とっとと帰る必要があったんだろうが。・・・・・・それにしてもお前さんも、よくもまぁ小菊を探し当てたもんだなぁ」

 佐吉の村から京までの間にも、あらゆる岡場所はある。
 さっさと捌いてしまいたいなら、手近なところで小菊を手放すことだってあり得る。
 京まで連れて行くとは限らないのだ。

「大変だったけど・・・・・・それだけに、見つけたときは嬉しかったぜ」

 へへ、と俯いたまま笑う。