始末屋 妖幻堂

「根は良い奴なのかもな。親父も兄貴も、そう悪い奴じゃなかったんだろ?」

 こくりと、小菊は頷く。

「あんまり村の人たちとの交流はなかったですけど、田植えの季節や収穫時なんかは、長のところの仕事も手伝いに来てましたし。控えめな、良い人たちでしたよ」

 ふと千之助は、佐吉の兄を思い出した。

「そうそう、そういやぁ、佐吉にゃ兄貴がいたな」

 何気なく言った途端、ぴく、と小菊の顔が強張った。
 おや、と千之助が小菊を見ると、彼女は少し躊躇いがちに口を開いた。

「あのぅ・・・・・・佐吉さんのお兄さん、家で一緒に働いてた人と、ちょっといい仲になってたみたいで」

 ああ、と千之助が頷く。
 里のことだ。

「でも大人しい人だったから、そう大っぴらに逢い引きとかをしてたわけじゃないけど。知ってる人は、ほとんどいなかったと思います。あたしも、たまたま知っただけだし」

 皆が皆知っている関係なら、長だってさすがに嫁に迎えはしないだろう。
 里が長の後添えに入ったのは、小菊がいなくなると同時ぐらいだ。
 小菊は知らないだろう。

 二年間も精気を吸われ続けたら、干涸らびるのもわかるような気がするな、と、千之助は兄貴の骸を思い出した。
 おそらく村の者との交流を持たず、ひっそりと暮らすことを望んでいた佐吉の家族だ。
 徐々に兄貴が弱っていっても、誰もわかるまい。