始末屋 妖幻堂

 さしてどこも悪くない者たちというのは、里に部分的に記憶を操作された者たちだろう。
 ということは、女子ということか。

「な、その重病人ってのぁ、大抵が男だろう?」

 動けなくなるほど精気を吸われたのは、直接里と交わった男どもだ。
 女子はおそらく、口から吸われたのだろう。
 男相手だと、そう問題にならないかもしれないが、女同士でそういうことをするというのは、廓でもない限り、おかしなことだ。

 故に、女から精気を吸ったときは、里はその記憶をいじっていたのだ。
 今のように、里自身が完全に消えれば、里に関する記憶自体が全て消えるが、里が存在している状態だと、記憶は完全には消えない。
 ちょこちょこいじって、おかしくするしかないのだ。

「そういえば。男のかただけが、かかる病かと。長も、ちょっとその辺を心配してました」

「ふむ。ま、病に関しては、もう心配いらねぇ。そもそも、お前さんが面倒見てた奴らは、もう死んじまったんだったな」

「ええ。佐吉さんが、小屋の裏にお墓を作ってあげてました。佐吉さんは、男だけに伝染(うつ)る病だとしても、そのときはそのときだって、特に嫌がりもせず、皆の面倒をちゃんと最期まで見てあげて・・・・・・」

 言いながら、小菊は照れくさそうに俯いた。
 やはり、どんな噂があっても、小菊は佐吉を想っているのだ。

 確かに小菊を真剣に想うようになってからの佐吉の行動は、大したものだ。
 小菊の気を惹きたいだけだと佐吉自身は言っていたが、それだけで伝染るかもしれない死病の患者の世話を、臆することなく続けることは、真にいい加減な者なら出来るものではない。