始末屋 妖幻堂

 小菊の言うことも、もっともだ。
 いくら性に大らかな山村であっても、あらゆる女子に手を付けるような輩は敬遠される。

 そういえば、佐吉は冴にも手を出していたようだ。
 姉妹のように育てられた冴にまで夜這いを仕掛けたのなら、さすがに小菊も気分は悪かろう。

「まぁ・・・・・・佐吉さんは、あたしのものでもないですし、あたしがそんなことで腹を立てる権利は、ないんですけどね」

 そう言って、小菊は少し悲しそうに笑った。
 狐姫が、唇を尖らせる。

「自分のものとか、そうでないとか・・・・・・。ヒトの心なんて、わかんないもんじゃないかえ。あちきは旦さんのモンだけど、旦さんはあちきのモンかなんて・・・・・・わかんないもの」

 狐姫には珍しく、自信なさげに語尾が小さくなる。
 伯狸楼で、おさん狐に言われたことが、心に引っかかっているらしい。

「おや? こらまた意外なことを言うねぇ。夕べあんだけ俺っちが、お前さんに愛を語ったのによ」

 そうだっただろうか、と、狐姫はきろりと千之助を睨んだ。
 いかにも情熱的に狐姫をかき口説いたような物言いだが、実際はもうちょっと、さらっと流されたような。

 が、確かにいつもの軽口ではなく、それなりに真剣に気持ちを伝えてくれた。

「心配せんでも、俺っちはお前さんのだぜ。少なくとも、心はな」

 狐姫の肩に手を回し、千之助は、にっと笑う。
 そんな二人を眩しそうに見ていた小菊に、千之助が顔を向けた。