始末屋 妖幻堂

「ん? 何だい?」

 千之助が腰を浮かす。
 禿はもう一度小菊を見、次いで己の背後を振り返った。
 禿の背後には、佐吉が寝ている。

「佐吉が、小菊を呼んでんのかい?」

 こくりと禿が頷く。
 千之助は、落ち着かない様子で禿を見る小菊を見た。

「ま、うわごとだろうな。夕べも言ったが、佐吉は村で大怪我を負った。ちょいと危ないほどだったがな、幸いお前さんの村には、良い薬草がいっぱいあったんでね、血もすぐに止まったようだ。あとは佐吉の体力次第、と思ってたんだが、ここまでもちゃ、もう大丈夫だろ」

「・・・・・・あの」

 確かに佐吉が今ここにいるということは、夕べ聞いたが、その言われた状況を思い出すと、やはり初心な小菊は恥ずかしくなる。
 赤くなりながら、小菊はもじもじと口を開いた。

「佐吉さんは、何故ここに? 何故あたしを連れ去った奴らが、旦那様とやり合ったんですか? 佐吉さんは・・・・・・何で大怪我を負ったんですか?」

 佐吉がここにいることは言ったが、経緯もさらっと言っただけで、詳しい事情は話していない。
 千之助はとりあえず座り直し、味噌汁を飲みながら少し考えた。

「う~ん、そうさなぁ。もうお前さんは、結構記憶も戻ったようだし、それによる心の揺れもなくなったようだな。佐吉が目覚めねぇうちに、話しておいたほうがいいか」

 小菊が伯狸楼でどんな仕打ちを受けたか、話さないで済むなら、佐吉には話さないほうがいいだろう。
 身体の傷があるので、何も話さないわけにはいかないだろうが。