始末屋 妖幻堂

「うお・・・・・・ぐぐ・・・・・」

 脂汗を流している亡八の手を見れば、甲に深々と竹串のようなものが刺さっている。
 千之助が作っていたものだ。

 小菊は息を呑んだ。
 串は、手の甲から手の平まで、貫通しているようだ。
 あのような細く小さい串は、投げただけでは、とてもそんなに深くは突き刺さらない。

 一体どうやったのだろう、と思っていると、亡八が目を血走らせて杉成を睨み付けた。

「こ、このガキっ・・・・・・。よくも・・・・・・」

 無事なほうの左手で、匕首を抜く。

「格好つけた報いだぜ!」

「杉成さんっ」

 匕首を振り上げて襲いかかる亡八に、小菊が思わず叫び声を上げた。

 そのとき、杉成の手が動いた。
 目にも留まらぬ速さで小さな弓を構え、あっという間に先の串を番えて飛ばす。
 瞬きする間の早業だ。

 串のようなものは、小さな矢だったのだ。
 放たれた矢は、見事亡八の左目に突き刺さった。

「うおああぁぁぁっ!!」

 亡八が匕首を取り落とし、射抜かれた左目を押さえて仰け反る。
 固まっている小菊を、ぐい、と誰かが引っ張った。
 振り向くと、いつの間にか狐姫が背後に立っている。