始末屋 妖幻堂

 一旦言葉を切り、千之助は小菊の様子を窺った。
 小菊は涙の溜まった目で、じっと千之助を見つめている。

「お前さんの本当の名は、清だよ」

「・・・・・・」

「佐吉は村の遊び人だ。家にも寄りつかねぇで、ふらふらしてるような放蕩息子だったが、お前さんに惚れたようだな。お前さんの仕事を、いろいろ手伝ってくれたろ?」

 小菊の口が、何か言おうと僅かに動く。
 が、それを千之助は、軽く制した。

「無理に思い出さなくてもいい。とりあえず聞いてくれ。佐吉は初め、遊び人らしく、可愛いお前さんにちょっかいをかけてただけだった。それが・・・・・・」

 ふと、千之助の目が、小菊を通り過ぎた。
 奥の襖を見る。

 狐姫が、千之助の意を受けて、襖を細く開いた。
 途端に、僅かに残っていた気付けの香の香りに、顔をしかめて鼻を押さえる。

「お目覚めかえ。とはいえ、凄い怪我だ。いきなり動くんじゃないよ」

 佐吉も目覚めたようだ。
 だが小菊と違って重傷の佐吉は、目覚めたからといって、すぐに動けるわけではない。

「ちょっと待てよ」

 ぽんぽん、と小菊の肩を軽く叩いて、千之助は立ち上がった。
 隣の部屋に入る。