「・・・・・・佐吉を、覚えてるかい?」
静かに問うた千之助に、小菊は、はっと顔を上げた。
「あいつに呼び出されて、お前さんはあの日、村外れの樫の大木に行ったんだったな。あいつが何してたか、お前さん、知ってるかい?」
「佐吉さん・・・・・・」
床に手をついて考える小菊に、千之助は少し鋭い目を向ける。
小菊の記憶がどの程度戻っているのか、まだわからないのだ。
ふるふると、小菊の手が震える。
しまった、と千之助は、少し後悔した。
質問の順番が、いけなかったか。
樫の大木で、小菊は佐吉に会う前に、ヤクザ者に連れ去られているのだ。
実際に連れ去ったのは、単なる博徒で、直接伯狸楼の者ではなかったが、見知らぬ男に押さえつけられ拘束された記憶は、助け出される前の忌まわしい記憶と重なるだろう。
「落ち着け。佐吉はな、お前さんを、真に想ってたようだぜ」
「え・・・・・・」
震えが止まり、小菊がぽかんとしたように、千之助を見る。
千之助は小菊の前に膝を進めると、ぽん、と彼女の肩に手を置いて、静かに言った。
「あまり何も考えねぇで聞いてくれ。お前さんは、信州尾鳴村の出身だ。尾鳴村の村長、太一郎の家で、娘の冴と一緒に暮らしていた。冴は長の本当の娘だが、お前さんは早くに両親を亡くしたらしい。それで長が引き取った。長はお前さんを、冴と同様、娘として育ててたようだ。もっともお前さんは、家のことも、よく手伝っていたようだが。冴とも仲が良かったようだな」
静かに問うた千之助に、小菊は、はっと顔を上げた。
「あいつに呼び出されて、お前さんはあの日、村外れの樫の大木に行ったんだったな。あいつが何してたか、お前さん、知ってるかい?」
「佐吉さん・・・・・・」
床に手をついて考える小菊に、千之助は少し鋭い目を向ける。
小菊の記憶がどの程度戻っているのか、まだわからないのだ。
ふるふると、小菊の手が震える。
しまった、と千之助は、少し後悔した。
質問の順番が、いけなかったか。
樫の大木で、小菊は佐吉に会う前に、ヤクザ者に連れ去られているのだ。
実際に連れ去ったのは、単なる博徒で、直接伯狸楼の者ではなかったが、見知らぬ男に押さえつけられ拘束された記憶は、助け出される前の忌まわしい記憶と重なるだろう。
「落ち着け。佐吉はな、お前さんを、真に想ってたようだぜ」
「え・・・・・・」
震えが止まり、小菊がぽかんとしたように、千之助を見る。
千之助は小菊の前に膝を進めると、ぽん、と彼女の肩に手を置いて、静かに言った。
「あまり何も考えねぇで聞いてくれ。お前さんは、信州尾鳴村の出身だ。尾鳴村の村長、太一郎の家で、娘の冴と一緒に暮らしていた。冴は長の本当の娘だが、お前さんは早くに両親を亡くしたらしい。それで長が引き取った。長はお前さんを、冴と同様、娘として育ててたようだ。もっともお前さんは、家のことも、よく手伝っていたようだが。冴とも仲が良かったようだな」


