始末屋 妖幻堂

 がしがしと頭を掻きながら、千之助は唸った。
 はっきり言うと、面倒臭い。
 目覚めてしまえば、何があったかなど、どうでもいいのだ。
 小菊が犯されていようと、そんなことは関係ない。

 が、この後の小菊の身の振り方や、今現在の記憶の状態を知るには、今までのことを小菊自身から聞く必要がある。
 記憶の状況を調べるには、先の出来事は避けて通れないだろう。

「とにかくだ。やられちまったもんは、仕方ねぇ。廓にいた女が、いつまでも生娘だなんて、誰も思っちゃいねぇよ。そんなことは、気にするこっちゃねぇ」

 かつん、と煙管を盆に打ち付け、千之助は、ずいっと小菊のほうに身を乗り出した。

「で、でも。そんな女、もう普通の暮らしは、できないでしょう?」

 小菊が言い、またすぐに口を押さえる。
 どうしても、こういう話になると身体が反応してしまうようだ。
 吐き気がこみ上げ、苦しそうにする。

「どうかね。そいつはお前さん次第さ。いかな俺っちでも、お前さんを生娘に戻すことはできねぇ。案外男は、そんなことぁ気にしないもんだぜ」

「・・・・・・それは、旦さんだけかもしれないよ。初物好きな男もいるからね」

 ぼそ、と狐姫が突っ込む。
 おや、と千之助は、狐姫を見た。

「何だ狐姫。お前さん、俺っちが小菊を抱いてもいいってのかい?」

 ぴく、と狐姫の頬が引き攣る。
 小菊が、びくりと身体を強張らせたが、ふと気づいたように、千之助を見た。

「どういうことですか? あの、旦那様に抱かれれば、あたしは、その・・・・・・」

 赤くなって俯く。
 その横では、狐姫が唇を引き結んでいる。
 千之助は少し考え、ひらひらと手を振った。