始末屋 妖幻堂

「お目覚めかえ。とんだ目に遭ったねぇ」

 狐姫がにっこりと、小菊に座布団を勧めた。
 女子に対しては厳しい狐姫だが、それは千之助にちょっかいを出す者に対してだけだ。

 小菊は別に千之助に惹かれてはいないし、何より稲荷寿司を上手に作れる。
 これだけでも、小菊の株は結構高い。
 単に千之助とべたべたできて、機嫌が良いというのもあるが。

「姐さん・・・・・・。あ、あたしは・・・・・・」

 ぺたりと座布団に座り、小菊はまだ不安そうに部屋の中を見回した。
 部屋は遊女らが転がり込んできたときに片付けたが、店のほうはまだ乱闘で散らかったままだ。
 それがまた、小菊の恐怖を呼び起こす。

「よしよし。あのね、伯狸楼は約束通り、旦さんがぶっ潰してくれたよ。だから、もう大丈夫だよ。裏の奴らも始末した。安心していいよ」

 ぶるぶる震える小菊の頭を撫でながら、狐姫が言う。

「え・・・・・・。潰したって・・・・・・だって・・・・・・」

 信じられない、というように、小菊が顔を上げる。
 確かに、千之助にそんな力があるとは思えない。
 どう見ても、単なる町人だ。

 腕っぷしが良いようにも見えない。
 裏のヤクザ者などに、とても敵うようには見えない、小さな男だ。

「ま、信じられねぇのも無理はねぇわな」

 言いながら、千之助は狐姫の傍に座り直し、長火鉢に寄りかかって、置いていた煙管を咥えた。