始末屋 妖幻堂

「ん・・・・・・」

 ぱちりと、小菊の目が開く。
 そのまま、固まったように宙を見つめる。
 じっと天井を見つめ、やがてゆるゆると、視線を動かした。

 天井から壁を伝って、小菊の視線が人形たちに降りた途端、びくんと小菊の身体が強張った。
 部屋の中は灯りがない。
 千之助と狐姫がいた隣の部屋からの灯りしかないので、人形たちは影しか見えない。

 沢山の人が周りを取り囲んでいるように見え、小菊はあからさまに怯えた表情になった。

「おっと、騒ぐなよ。ここは小間物屋だ」

 跳ね起きようとした小菊の肩を軽く掴んで、千之助は努めて落ち着いた声を出した。
 変に押さえつけては、返って逆効果だと思ったのだ。
 悲鳴など上げられたらたまらない。

 千之助が触れた瞬間、案の定小菊はまた大きく身体を震わせたが、目が彼を捉えた途端、動きを止めた。

「だ、旦那様・・・・・・?」

 千之助は、僅かに顔をしかめた。
 どうも『旦那様』という呼ばれ方には慣れない。

「ここは伯狸楼じゃねぇ。お前さんが恐れることは、何もねぇよ。とりあえず、こっちの部屋に来な」

 何が何だかわからない上に、佐吉まで見せたら混乱するだけだ。
 いまだぽかんとしている小菊を抱えるように、千之助はそそくさと彼女を隣の部屋へと追いやった。
 枕元の香炉に蓋をして火を消し、襖を閉める。