始末屋 妖幻堂

 その頃、小間物屋に一人の客が来た。
 商品の細かい説明などはわからないが、とりあえず簡単な接客ぐらいはできようと、小菊は店に出た。

「いらっしゃいまし」

 客は町人風の男だった。
 小菊は商品の並んだ棚を挟んで男と向き合い、向こうの出方を待った。
 男は商品を見つつ、少し小菊に近づく。

「・・・・・・おや、新顔か?」

 じろじろと小菊を見、男が口を開いた。

「珍しい・・・・・・。お前さん、いつからここに?」

「ええっと・・・・・・。あの、少し前からお世話になって・・・・・・」

 何となく不穏な空気を感じながらも、どうかわせばいいのかわからず、小菊は問われるまま答える。

「ほぅ? こりゃまた何で。若い身空で」

「あ、あの・・・・・・」

「飢えてたわけでもなさそうな。見たとこ、礼儀作法も知ってそうだ。そんな奴が、こんなところにわざわざ身を寄せるたぁ・・・・・・」

 にやりと笑い、男が手を伸ばす。
 袖が少しめくれ、手首がちらりと見えた。

「!!」