「さっさと目覚めてくれねぇと、こっちの部屋まで漏れてきたら嫌だなぁ」
煙管に新しい煙草を詰めながら、千之助がぼやく。
その煙管を後ろからひょいと取り、狐姫は火を付けて一服吸った。
「そんなさっさと目覚めさせちまったら、折角やっとこ二人になれたってのに、またお邪魔虫が増えるじゃないか」
ふ、と紫煙を吐き出して、煙管を千之助の口に咥えさす。
自然に、千之助は吸い付け煙草を受けた。
「まぁな。でも、そろそろ目覚めてもらわねぇと、ヒトの身なんざ、そうもたん。遊女らがいなくなったら、世話する人間もいねぇしな。呶々女だって、しばらくは牙呪丸のお守りでいっぱいいっぱいだろ」
「そだねぇ。旦さん、人の世話なんてできないもんねぇ。自分の世話もできないのに」
「お前さんの世話なら、喜んでやるぜ」
相変わらずの軽口にも、狐姫は満足そうにごろごろと甘える。
そして、ひくひくと鼻を動かした。
「んん・・・・・・。匂ってきたねぇ。ほんとに目覚めるのかい?」
「目覚めてくれねぇと困るぜ」
千之助は襖を睨んだ。
しばしそのままじっとしていると、僅かに襖の向こうの空気が動く気配がした。
狐姫に目配せし、千之助は再び立ち上がって襖に近づき、袖で鼻を覆ってから、そっと引き開けた。
二人とも、まだ横になっているが、小菊の眉間に、僅かに皺が寄っている。
千之助は、ちょっと迷って、小菊の目の前に右手を突き出した。
ここまでくれば、あと一息なので、目の前で手を叩くなりすれば良いのだが、鼻を押さえる左手は離したくない。
突き出した右手の指を、千之助はぱちんと鳴らした。
煙管に新しい煙草を詰めながら、千之助がぼやく。
その煙管を後ろからひょいと取り、狐姫は火を付けて一服吸った。
「そんなさっさと目覚めさせちまったら、折角やっとこ二人になれたってのに、またお邪魔虫が増えるじゃないか」
ふ、と紫煙を吐き出して、煙管を千之助の口に咥えさす。
自然に、千之助は吸い付け煙草を受けた。
「まぁな。でも、そろそろ目覚めてもらわねぇと、ヒトの身なんざ、そうもたん。遊女らがいなくなったら、世話する人間もいねぇしな。呶々女だって、しばらくは牙呪丸のお守りでいっぱいいっぱいだろ」
「そだねぇ。旦さん、人の世話なんてできないもんねぇ。自分の世話もできないのに」
「お前さんの世話なら、喜んでやるぜ」
相変わらずの軽口にも、狐姫は満足そうにごろごろと甘える。
そして、ひくひくと鼻を動かした。
「んん・・・・・・。匂ってきたねぇ。ほんとに目覚めるのかい?」
「目覚めてくれねぇと困るぜ」
千之助は襖を睨んだ。
しばしそのままじっとしていると、僅かに襖の向こうの空気が動く気配がした。
狐姫に目配せし、千之助は再び立ち上がって襖に近づき、袖で鼻を覆ってから、そっと引き開けた。
二人とも、まだ横になっているが、小菊の眉間に、僅かに皺が寄っている。
千之助は、ちょっと迷って、小菊の目の前に右手を突き出した。
ここまでくれば、あと一息なので、目の前で手を叩くなりすれば良いのだが、鼻を押さえる左手は離したくない。
突き出した右手の指を、千之助はぱちんと鳴らした。


