始末屋 妖幻堂

「女将さんには、そろそろ白粉辺りが入り用なのでは? 紅もなかなか良いものが入ってますぜ」

 そこに、何人かの女中が入ってきた。
 並べられた商品に、皆目を輝かせる。

「皆、いつもご苦労様。お小遣いはあるかしら?」

 女将の言葉に、はい、と元気よく答え、女中たちは先を争って商品に群がった。

 少しだけだが、女将は皆に給料を払ってやっている。
 そもそも女中らは、あまり自由がないため、給料をもらっても、使うこともない。

 だから、たまにこうして行商が来るのが彼女らの唯一の楽しみなのだ。
 もっとも今のように、女将が呼んでくれないと、大っぴらに楽しむこともできないのだが。

「いやぁ、こんなに若ぇ娘さんが見てくれんなら、もちっとそれなりに数揃えて来るんだったなぁ」

 陽気に言う千之助に、女将は、ほほほ、と笑い、貝殻に入った紅を手に取った。

「いつもながら、おかしなお人だこと。ご自分だって、お若いでしょうに。まるで年寄りのようですよ」

 その言葉に、少しだけ口角を上げ、千之助は女中らに商品の説明を始めた。