始末屋 妖幻堂

「・・・・・・お前さん、そんなに俺っちが好きなのか」

 ずばりと言ったことに、桔梗は顔を赤らめた。
 千之助の後ろでは、呶々女が『おおっ』というように、身を乗り出す。

「だったら、はっきり言うぜ。お前さんの気持ちは嬉しいがな、俺っちにゃその気はねぇ。お前さんらを助けたのも、成り行き・・・・・・とまでは言わねぇが、仕事の都合上だ」

 火が出た原因は、九郎助とおさんの喧嘩のせいだ。
 九郎助が動いたのは、千之助の仕事絡みなので、千之助も無関係ではない。
 己の仕事の都合での火事に、何の罪もない遊女を巻き込むわけにはいかなかったのだ。

「・・・・・・成り行きだけで、あんな死ぬ思いまでして助けてくれる人なんて、いないよ・・・・・・」

 ぎゅっと膝頭を掴み、桔梗が言う。
 声が震えている。
 泣き出しそうなのを、堪えているようだ。

「それは・・・・・・俺っちの特性ってか。救えるモンは救う。俺っちにゃ、そういう義務が課せられている」

 言いながら、さりげなく千之助は、己の下腹部をさすった。

「とにかく、そういうことだ。俺っちのことは、諦めてくんな。そもそも普通の娘が俺っちなんぞと一緒になったところで、幸せにゃなれねぇぜ。化け物だからな、俺は」

「千さん」

 さらっと己のことをバラした千之助に、呶々女が後ろから袖を引く。
 が、遊女らには意味がわからなかったようで、特に突っ込みも起きない。