始末屋 妖幻堂

「・・・・・・旦那さん。ここしばらく厄介になってるけど、そんな女(ひと)、見たことないよ?」

 帰ってからしばらくは、千之助もあまり動かず療養していた。
 普通ならそのようなときこそ、面倒を見に来るものではないのか。
 事実遊女らは、こぞって千之助の面倒を見たがっていた。

 もっとも千之助は、もっぱら二階に引っ込んでいたので、遊女らはあまり世話を焼くこともできなかったのだが。

「俺っちが、嘘ついてるとでも?」

 煙管を弄びながら言う千之助に、桔梗は考えつつ言う。

「そうは言わないけど・・・・・・。で、でもあちきだったら、好いた人が怪我してたら、飛んでいくよ? それにさ、姿を見ないってことは、少なくとも女房じゃないよね?」

 結婚していなければ、望みはあると言いたいのだろう。
 千之助は、大きくため息をついた。

「まぁ・・・・・・そう言ってしまえば、そうだがな。お前さんの疑問も、もっともだよ。普通の娘は、そうなんだろうな」

 そう言って、ちらりと視線を上に向ける。
 狐姫は二階にいるのだ。
 ずっと一緒にいたが、それは普通の人間ならあり得ない。
 ヒトであれば、飯も厠も必要ないわけはないからだ。