始末屋 妖幻堂

「都にいたいなら、いればいいがな。ここにゃ置けねぇ」

「何で? あちき、ちゃんと働くよ?」

「働く働かねぇ以前に、人に不足はしてねぇんだ」

「山吹から聞いたけど、旦那さん自ら行商してるそうじゃないか。あちきが入れば、旦那さんがそんなことしなくても、いいんじゃないか?」

 ふぅ、と千之助は息をつき、かつん、と煙管の雁首を煙草盆に打ち付けた。

「いい加減にしねぇか。俺にはちゃんとした女がいるんだよ。これ以上手を焼かせねぇでくれ」

 千之助にしては珍しく、苛々と言った言葉に、桔梗は動きをなくした。
 打たれたように、目を見開いて千之助を見つめる。
 しん、と静まり返った室内に、気まずい空気が流れた。

「・・・・・・桔梗姐さん。姐さんが惚れた男が、他の人の目に留まらないわけないじゃないですか。千さんだって、子供じゃないんだし」

 さりげなく、呶々女が取り繕う。
 桔梗は、きゅっと唇を引き結んで、下を向いた。

「とはいえ、帰りたくねぇってんなら、無理に帰そうとも思わねぇ。・・・・・・この辺が、甘いんだろうけどな」

 ぶつぶつと言い、千之助は不味そうに煙管をぷかぷか吹かせた。
 依頼外の厄介事など、先のことなど考えずに、有無を言わせず放り出せば良いのだ。
 それが、千之助にはできない。

---俺っちも、随分と優しくなったもんだ---

 自虐的に思いつつ、一人千之助は煙管を吹かす。