始末屋 妖幻堂

「そ、そりゃ・・・・・・」

 小萩が身を乗り出した。
 家があり、家族のある者はそうだろう。
 千之助は、芙蓉を見た。

「お前さんはどうだい? 多分長も、また働かせてくれって言えば、雇ってくれるぜ。病が癒えれば、戻ってもいいとかいうことも言ってたしな。今は特に、昔ながらの婆さんしかいなかったから、戻ってくれれば有り難いはずだ」

「そうかな・・・・・・」

 芙蓉はそう言って考えるが、桔梗は首を傾げる。

「ん~・・・・・・。あのさ、都で暮らしていくことは、できないもんかな」

 そう言って、ぐるりと部屋を見渡す。

「旦那さんは、小間物屋だってね。ねぇ、あちき、ここで働きたい」

「は?」

 思わず千之助の眉間に皺が寄る。
 初めに『ここに置くわけにはいかない』と言ったはずだ。

「何言ってやがる。人の話、聞いてたか?」

「だって、他に行くとこないもの」

「だから、村に帰れって言ってんだよ」

「あんな山奥の村に帰ったって、つまんないよ。あちきはこのまま、都にいたい」

 桔梗は必死で食い下がる。
 彼女はすっかり千之助に惚れ込んでいるようだ。
 何せ、命の恩人だ。
 命懸けで助けてくれた人に、惹かれない女子がいようか。