始末屋 妖幻堂

---呶々女は特に、こいつ一筋の牙呪丸相手だからなぁ---

 にやにやと笑いながら、ぽんぽんと呶々女を落ち着かせるべく頭を叩く。
 が、そんな千之助にも、呶々女はキッと鋭い目を向けた。

「千さん、何笑ってんだよ。とんでもない野郎じゃないか、あいつ」

 小声で呶々女は、千之助に言う。
 ナリだけでなく、思考も結構お子様な呶々女は、すっかりご立腹だ。

「ま、俺も牙呪丸も一途だからな」

 しれっと言い、千之助は、ぱんと手を叩いて皆を呼び戻した。

「よしよし。皆、思い出したな? じゃ、次の質問。お前さんら、帰る家はあるか?」

 この遊女らは皆、尾鳴村から連れてこられた。
 冴が言うには、皆寄る辺ない身の上だとか言っていたような気がするが。

「・・・・・・ねぇ。あれから、どれぐらい経ってるんだい?」

 小菫が質問を返した。

「帰るところがあったってさ、こんな何年も行方知れずになってた奴、いきなり帰っても困るんじゃないか?」

 他の遊女も、それぞれ顔を見合わす。
 小菫の言うことも、もっともだ。

 だが小菊はともかく、他の者は一旦正式に療養に出されているのだ。
 それから伯狸楼に連れ去られているので、長は自分の記憶が戻ったところで、娘らがいないのは、療養に出たから、と思っているはずだ。
 遊女らに家があれば、記憶が戻った時点で長に娘がいないことを相談するかもしれないが、千之助の見る限り、そのようなことを言いに来た村人はいなかった。