始末屋 妖幻堂

「廓に借金して働いてた身なら、そうだけどな。どっちにしろ、その廓自体がなくなった。例え証文があったとしても、あの火事で焼けてるさ。現におさんだって、逃げていいって言ったじゃねぇか。遣り手がそんなこと言うってことぁ、元々お前さんらにゃ、借金なんざなかったってことじゃねぇのかい?」

「え、だ、だって。じゃ、何であちきらは、あんな廓にいたのさ」

 まれに借金のために身を売ったわけではなく、初めから廓にいる人間もいる。
 生まれながらの花街関係者だ。

「あちきら、端からあそこの出身だっての?」

 ぞ、というように、桔梗が顔をしかめる。
 あそこでの非道な行いを仕切っていたのが、身内ということだろうか?
 が、千之助は首を振った。

「そうじゃねぇ。お前さんら、故意に記憶を消されてるのさ」

 ええ? というように、訝しげな目で見る遊女らの視線が己に集まったのを幸い、千之助は皆の中央にある香炉の上に手を突きだし、ぱちんと指を鳴らした。
 香炉の煙が濃くなり、そこに尾鳴村の様子が映し出される。

 ぼぅっとした様子でそれを見つめる遊女らの目の前で、映像は一軒の屋敷に近づいていった。
 長の家だ。

 映像はそのまま、ゆっくりと長の家の中をくまなく映し、一通り家の中を一周すると、家の周りも映し出す。
 念入りに長の家とその周辺を映し出した後は、また尾鳴村の風景を映していった。