始末屋 妖幻堂

 奥に通される道々でも、千之助は小太の姿を捜してみたが、どうやら店自体にいないらしい。

 特に驚くことでもない。
 小太が店にいないのは、言ってみればいつものことだし、使いっ走りに出ていることだってあろう。

 とりあえず、千之助は当座の仕事に専念することにした。

「千之助さん、ご無沙汰ですね。そろそろ来てもらわないと、と思っているところでした」

 母屋の離れで、女将は千之助を迎えた。
 そして、彼が商品を並べている間に、他の女中を呼びにやる。

「預かっている子らが、こういうものに興味を示すようになると、成長したんだなって実感しますわねぇ」

 前に並んだ紅や櫛を眺めながら、女将はおっとりと言う。

 ここの店は、他家の子供を多く預かっている。
 人買いから買う場合もあるが、大抵は親に連れられてくる。

 人買いから買われた子は運が良い。
 女の子は遊女にならないでも済むし、単なる奉公人としても、ここほどきちんとした待遇をしてくれるところは、ほぼ皆無といっていい。

 男の子だって、同様である。
 できる子であれば、出自に拘りなく出世させてくれるのだ。