始末屋 妖幻堂

「・・・・・・忘れたなぁ、そんな昔のこと。俺っちには、ずぅっとお前さんがいてくれるからいいのさ」

「・・・・・・おさんは、どうしただろうね」

 再び千之助に抱きつきながら、狐姫はぽつりと言った。

 おさん狐は、千之助たちに退路を示した後、姿を消した。
 半月たった今も、色町にも現れていないらしい。

「九郎助が注意して、花街を探ったようだが。ま、いいさ。今回のことは、おさんはあまり関係してない。阿片も遊女らには飲まさなかったようだし。確かにあの遊女たち、阿片漬けにしちゃ元気だなぁと思うしな」

 伯狸楼からの脱走者がなかったのは、小太と同じように、『裏見世に関することは気にならない』術によるものだ。
 裏要員でない遊女らには、八百屋の連中同様、軽くかけておけば良かったが、実際裏で働いていた遊女らは、己が非道な仕打ちを受ける。
 毎日傷ついて戻ってくる同僚を見る。
 軽い術では抑えられない。

 そのため、ある程度は目を光らせていたのだろう。
 おさんが付きっきりで術の効果を見ていれば、対応はできる。
 それを裏の男衆や楼主は、阿片のお陰だと思って安心していたのだ。

「それに、九郎助に散々懲らしめられただろうしな」

「そうだね。九郎様には、近づきたくないだろうね」

 ふぅ、と息をつき、目を閉じようとした千之助は、ふともう一つの厄介事を思い出した。