始末屋 妖幻堂

「おぅ小間物屋。どうしたぃ？　珍しいじゃねぇか」

　小太の店に顔を出すと、手代が目を丸くした。
　炊事をしない千之助なので、食材を買うことも滅多にない。
　行商中に立ち寄ったりはするし、たまに乾物を買ったりするのでお互い見知ってはいるが、ほとんど小太繋がりでの知り合いだ。

　千之助は、ざっと店内を見回した。
　小太の姿が見あたらない。

　もう少し神経を尖らせて、辺りを探る。
　とりあえず、怪しい気配はない。
　それでも念を入れて、ここで小太の名前は出さないよう、千之助はあえて何も聞かず、適当に青菜と乾物を注文した。

「最近どうだい？　女将さんのほうは、入り用なモンはねぇか？」

　ぽんと行李を叩いて言う千之助に、手代は笑って番頭を見た。

「そうさな。最近は女中連中も色気づいてよ。女将さんも物入りかもな」

　そう言いながら、番頭は千之助を奥に促した。