始末屋 妖幻堂

「こんなしょうもないことに、何故私が手を貸さないといけないんだい。別に色恋がこじれたわけでもないのに女が泣いたって、ちっとも面白くないさ」

 ふん、と鼻息荒く、おさんが言う。
 どうやらおさんは、直接裏の行為には関わっていなかったようだ。

 狐姫にしてもおさんにしても、興味のないことには徹底して無関心だ。
 そう考えれば、裏の所業など、おさんの興味は引かないだろう。

 おさんはあくまで、色恋絡みのごたごたを好む。
 ただの暴力や薬を使った裏工作など、ただ面倒なだけだろう。

「阿片に関してはどうだ?」

 とりあえず聞いてみた千之助に、おさんはきょとんとした目を向ける。

「あへん? て、何だい?」

「よし」

 きょとんとしたままのおさんの手を引き、千之助は身を翻した。

「出るぜ。おい牙呪丸、おさんを連れて行ってくれ。九郎助の旦那、狐姫の下の遊女を頼む」

「承知・・・・・・。したが旦那、おさんまで連れて行くのか?」

 九郎助狐が、小菊を肩に担ぎ上げながら言う。
 狐姫も不満そうだ。

「ああ。裏にも積極的に関わっちゃいねぇ、阿片も知らねぇってんなら、何も殺すことはあるまい」

「旦那も丸くなったものよな」

「そんなんじゃねぇ。我が身が可愛いだけさ」

 ぽん、と下腹を叩き、千之助は皆とは反対方向に走った。
 狐姫が驚いて傍に駆け寄ってくる。

『旦さんっ。どこ行くんだよ』