始末屋 妖幻堂

『おのれ、この女狐ぇっ! 馴れ馴れしくあちきの旦さんに触るんじゃないよっ!』

「‘あちきの’だって? ふん、何言ってんだい。男なんて、皆浮気者だよ。自分のだなんて思ってんのは、あんただけさ」

 牙を剥く狐姫に、馬鹿にしたように鼻を鳴らし、おさんは千之助に引っ付いて言う。

「耳が痛ぇなぁ・・・・・・」

 ぼそ、と千之助が呟いた。

「男は皆浮気者、か。願望だけなら、そうかもな。根っこはどうしても、女好きだからよ」

 胸に置かれたおさんの手を取り、千之助は苦笑いした。
 狐姫が、そんな千之助を、キッと睨む。

「怖ぇなぁ。おいおい、俺っちは、わざわざ大枚叩いて太夫を身請けしたんだぜ? お前さんに惚れたからに決まってるだろ」

『旦さん・・・・・・』

「何十年前の話だよ。それに、千の旦那が玉藻を身請けたのは、世に轟く妖狐を、放っておけなかっただけだろ」

 ちょっと和んだ空気も、おさんはばっさりと斬り捨てる。
 再び狐姫は、毛を逆立てておさんを睨み付けた。

「ねぇ旦那。何だったら、私が旦那の世話してあげるよ? 同じ眷属なんだし、玉藻より劣るとも思わないよ。どうだい、試してみないかい?」

 べっとりと千之助に抱きつき、頬に唇を寄せて、おさんが言う。
 狐姫が般若の形相で、ぎりぎりと歯噛みしているのを横目に見つつ、千之助は密かにため息をついた。