始末屋 妖幻堂

『お前は女子が悲しむのが好きなんだろ! 一緒じゃないか』

 口を挟んだ狐姫を、おさんはじろりと睨んだ。

『玉藻。お前だって、私と同じようなもんだろ。散々男を誑かして、それを楽しんできたんだから』

『お前なんかと一緒にしないどくれっ!!』

 むきーっと狐姫が牙を剥く。
 あまりに狐姫が気を乱すので、彼女に守られている小菊は、今にも炎に巻かれそうだ。

「おい狐姫。ちょいと落ち着け」

 千之助が、狐姫を宥める。
 が、女子同士だからか、生来の性格の悪さか、おさんはにやりと笑うと、疲れたように、目の前の千之助の肩にもたれかかった。

『ねぇ旦那。あんな癇性な女、捨てちまいなよ。あんな女が傍にいたら、旦那は廓にも行けないだろ? 旦那だって男だ。一人の女に何十年もつきまとわれちゃ、たまったもんじゃないよねぇ』

 男女の仲を裂くのは、おさんの得意とするところだ。
 遣り手として伯狸楼に入り込んでいたので、ここでの人型はそれなりの婆だったが、そもそも妖狐に決まった人型などない。
 妖艶な美女に変わることなど、お手の物だ。

 するすると、おさんは絶世の美女に変化(へんげ)した。

「たまには他の身体を試したいって、思うだろ?」

 千之助にしなだれかかりながら言うおさんに、狐姫が全身の毛を逆立てた。