「うわっ。何でぇ」

 驚く千之助の前に、どさ、と何かが落ちてきた。
 それと同時に、黒い影が、ふわりと降り立つ。

「おお、千の旦那」

「九郎助か・・・・・・」

 異空間で戦っていたのだろうか。
 不意に現れた人型の九郎助狐が、素早く千之助と牙呪丸の周りに結界を張った。

 ちらり、と奥の座敷を見る。
 狐姫も、小菊の上に覆い被さって、炎から守っている。

 千之助は足元に目を落とした。

「うっ・・・・・・く・・・・・・」

 先程落ちてきたのは、おさん狐だ。
 傷だらけで、蹲っている。

「おっとっと」

 千之助は、結界から出ていたおさん狐の尻尾を引っ張った。
 ぱたぱたと叩いて、毛先に付いた火を消してやる。

「おいおさん。あんま‘おいた’するんじゃねぇぜ。悪戯程度なら良いけどな、命に関わるようなことまでしちゃあ、しゃれにならんぜ」

 屈み込んで首根っこを掴み、千之助はおさんに顔を近づけた。
 その瞬間、尻尾は出ていたものの、一応遣り手の姿だったおさんは、狐の姿に変わる。