始末屋 妖幻堂

 一方千之助は、他の者よりも冷静に状況を見ていた匕首の男と対峙していた。

「・・・・・・なかなか肝っ玉の据わった野郎だな。この状況で、動揺しねぇ奴なんざ、そういねぇぜ」

 下半身が蛇の牙呪丸だけでも、普通の者なら気を失うなり腰を抜かすなり、見ただけでしそうなものだ。

「さすが、外道な見世のお抱え用心棒だけあるのかね。少々のことでは、驚かんか」

「お褒めにあずかり、光栄だね。ここまで来たら、保身第一なんだよ。うかうか腰抜かしてちゃ、お前らを奉行所に駆け込ますのを許すことになる。何者かはわからねぇが、奉行所にタレ込まれちゃ、死罪確定なんでな。誰しも、己の命は大事だろ」

 己の命を守るためなら、人外のモノにも立ち向かえるということか。
 ふん、と千之助は鼻を鳴らす。

「散々女子の命を奪っておいて、てめぇの命は惜しいのか。勝手な野郎だ」

 ゆっくりと間合いを詰める千之助に、男もじりじり動く。
 男が匕首を突き出した。
 小刀で弾くが、すぐに切り返してくる。

 しばらく打ち合いが続き、最後に双方、互いに目に付いた隙に打ち込み、交差して止まった。

「お前は妙な変化(へんげ)はしないようだな? さっきは何か、火の手妻を使ってたが」

 にやりと男が口角を上げる。
 千之助の袖が斬れ、血が滲んだ。