始末屋 妖幻堂

「改心の兆しはなし・・・・・・か」

 言いながら、千之助は小刀を抜いた。

「改心だぁ? 大体何で、一介の小間物屋なんぞに説教されねぇとならないんだ? お前、何様のつもりなんだよ」

 びしっと匕首を突きつけ、男は血走った目を向ける。
 千之助は、僅かに眼を細めた。

「言ったところで、信じねぇだろうよ。俺は『千』の字を名乗っちゃいるが、まだまだ人間臭さが抜けねぇ。上役はお優しいがな、俺っちは、そうは行かねぇぜ」

 千之助は、周りを見た。
 先の牙呪丸の攻撃で、あらかた倒されているが、難を逃れた者もいる。

「牙呪丸。他の奴ら、頼んでいいかい?」

 視線は目の前の男に据えたまま、千之助は少し後ろに佇む牙呪丸に言った。

「ふむ。小娘だけに気をつけておれば良いのじゃな?」

「ああ。手加減無用だ。思い知らせてやんな」

「・・・・・・承知」

 にやりと、牙呪丸が笑う。
 滅多に見られない、牙呪丸の笑みだ。

 が、その笑みは見る者を凍り付かせる、凶悪で且つ不気味なものである。
 口角の上がった口からは、二股に分かれた細い舌が、ちらちらと覗いているのだ。
 周りの男たちは、息を呑んだ。