始末屋 妖幻堂

「なぁ親父。いくら亡八だからって、遊女をヒトとして扱わねぇってのぁいただけねぇぜ。あんたらにとっちゃあ、単なる余興の客寄せなんだろうがな、遊女の身にもなってみな。ただでさえ、辛い商売だぜ。その上にまた、辛い思いを乗せることもあるまい。借金がチャラになったら、足抜けさせてやんな。それがこの世界の、決まり事だぜ」

「黙れぇ!」

 楼主に言っていた千之助の後ろから、いきなり怒鳴り声がした。
 同時に、びゅんと匕首が襲う。

「余計なこと、すんじゃねぇよ。下手に改心されちゃ、俺たちの稼ぎがなくなるだろうが!」

 横に飛んで匕首を避けた千之助は、その匕首を突きつける男に向き直った。
 この男も、矢の餌食にはならなかったようだ。

「他人を食い物にするような稼ぎなんざ、端からやる価値はねぇよ」

「ふん。商売なんざ、言ってみれば皆そんなもんだ。大なり小なり、他人の稼ぎを食い物にしてるだろ」

「・・・・・・モノは言いようだな。普通の商いは、需要と供給が成されてるんだ。客の求めに応じて、好みのモノを売る。それが商売だ」

「その基本ぐらい、ここでだって成り立っている。女を痛めつけたい客の求めに応じて、遊女を提供してるんだ。何が悪い」

 ふ、と千之助は息をついた。
 こういう者らとは、端から考えの根っこが違うのだ。